


福島県・大七酒造株式会社
太田英晴さん(代表取締役社長)

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2002年、半世紀ぶりに桶仕込みを再開しました。蔵にあった古桶を2本、福島県は川俣町の鴫原(しぎはら)広さんという桶屋さんに頼み、組み換えてもらったものを使いました。
普通の(琺瑯びきやステンレスのタンクで醸した)純米酒であれば、はじめはある程度辛さがあって、それが夏を越して次第に丸くなるものです。けれども桶で仕込んだ純米酒は、なにか最初から滑らかさがあり、かつ凝縮感がある。しかも舌触りやテクスチャーには、桶仕込み独特のものがあるようです。
私たち大七は、 づくりにこだわっています。過去を懐かしんでいるわけではなく、酒造りの知恵が最も凝縮した伝統的なつくりであり、かつ、いまも最高の酒がつくれると思うからです。
そして木桶にも、そこに職人の技術や知恵が詰まっているという点で、生もとづくりと通じるものを感じます。室町時代、日本の職人たちが、水の漏れない大きな桶を初めてつくりました。それまでは甕(かめ)で少量ずつしかつくれなかった日本酒の世界は、大きな木桶の登場で、一気に飛躍しました。そういう歴史や職人の技術が詰まったものの魅力に、大七はとりつかれているといってもいい。大事にしたいのです。

長い時をへて酒蔵には、微生物でも酒造りに適したものだけが残り、分厚い層になっているのでしょう。うちの蔵をどんなに消毒しても、冬になればいつもの乳酸菌や硝酸還元菌(しょうさんかんげんきん)が復活してくるんですよ。
よく「生もとなんて不安定で、コントロールが大変じゃない?」と言われます。でも、生もとの中で微生物は、時計のように規則正しく、決まったように動いてくれるんです。長い時の中で淘汰され、蔵にはいいものだけが残った。やはり時には、それだけの効果があるんですね。
そうやって自然に微生物につくらせた醸造酒だからこそ、外国に持っていっても、ワインなどの醸造酒と同じような評価軸で評価してもらえ、評判もいいのだと思います。私たちの生もとのお酒は、日本酒には珍しくワインに通じるようなしっかりした骨格や構成感を感じると、世界的なワイン鑑定家の方にも好評いただけました。
これからおもしろいのは、吟醸酒ならざる高級酒をつくる試みだと思います。お酒も上質なものになるほどに、人間のコントロールに余るところが出るものです。人間が思ったようにできたものが最上かといえば、そこにプラスアルファがなければ、人を感動させるところまではいかないように思いますし。
桶がなくても、酒にそういうことは起きます。しかしそうしたきっかけのひとつに、桶がなるかもしれません。
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