南部美人

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桶から麹が引き出したのは、ヴァニラの香り。

岩手県・株式会社南部美人 
久慈浩介さん(五代目蔵元・製造部長)


桶でこそつくるための酒を模索して


岩手県・株式会社南部美人
全麹仕込みに情熱を注ぐ久慈浩介さんと木桶


若い!南部美人の蔵の皆さん


蔵の一角に据えられた小さな木桶


酒粕出荷も、大忙し

五代目蔵元であり、製造の責任者。つまり技術者であることを、僕は大切にしています。東京農業大学の醸造学科時代には、大吟醸酒の企画から製造、売るところまで学生が担当するプロジェクトや、石垣島での泡盛づくり、酵母研究などに参加しました。

そんな技術者としての僕としては、正直なところ、桶でお酒を仕込むなんて頭になかった。現代の味覚のなかで、木桶で仕込んでいいお酒ができるわけないと、思っていましたから・・。でも、桶仕込み保存会には最初から参加しました。セーラの言う、桶でやることのイデオロギーには賛同していますから。昔からの技術を復活させたり、桶屋さんを後世に残していくことが重要だというのは、よくわかるんです。桶は、日本の伝統文化ですから。

それで考えたのは、ならば僕は「桶でこそつくるためのお酒」をつくろう、ということ。選んだのが、僕が開発した日本酒の全麹仕込みの手法でした。普通の日本酒であれば、麹米2割に掛米(白米)8割で仕込むところを、麹米10割で仕込むのです。学生時代、泡盛の蔵で研修した経験からヒントをもらいました。泡盛というのは、全麹仕込みですからね。

この方法でつくったお酒を、全麹純米仕込み酒「ALL KOJI」として、既に1998年から製品化しています。「これはおもしろい」と好評なんですよ。「ALL KOJI」は、普通の日本酒よりアミノ酸や酸度、グルコースが3倍ほど多く、コクがあり、かつ甘口のデザートワインのような味わいです。しかも瓶の中で熟成が早く進むので、買ったらすぐ飲んでもいいけれど、自宅で寝かせて熟成を待つこともできる。待つ楽しみがある日本酒なのです。

この全麹仕込みの手法を、木の桶でやったら、間違いなく合うんじゃないか、絶対イケるゾ・・しかも僕の開発した全麹仕込みという技術を見究める意味もある――考えがそこに至ったとき、僕も桶仕込みに取り組む意欲がわいてきた、というわけなんです。


ヴァニラ香を含み、コクのある白ワインのような・・コクのある白ワインのような・・

 
こうして、「ALL KOJI」の桶ヴァージョンである木桶仕込み純米酒「桶の民(おけのたみ)」が誕生しました。それで肝心の味ですが――僕は、味が濃いワインみたいなお酒で、少し樽っぽいような香りがつくのを予想していたんです。そして「桶の民」は、まさにそんな感じに仕上がりました。ヴァニラっぽい香りがして、酸味も甘みもしっかりとある。「All Koji」は甘口だけど、「桶の民」は辛口の白ワインの味わい。桶というのは保温力がすごいから、醪(もろみ)の発酵が進みやすい。そんな仕込みを見つめるなかで、「桶の民」は「ALL KOJI」より少し辛口に仕上げるのがよいと判断しました。だから、食中酒としてお勧めしているんですよ。

父にも聞いてみましたが、うちの蔵で木桶を使わなくなって、既に半世紀はたつんです。うちの山口一(はじめ)杜氏(80歳)は、「現代の名工」として表彰された南部杜氏の第一人者ですが、桶仕込みの経験はありません。昔の職人は、最初の5年10年は追い回し(下働き)ばかりさせられたから、その間に桶は消えていた・・という感じらしい。山口杜氏は、「(桶は)俺も触ったことないから、やってみるのは楽しい」と喜んでくれたんですよ。

桶洗いには、気を遣いました。ササラを使って洗っても、雑菌を取れきれないんじゃないかと心配で。桶を逆さにして、蒸気でワーッと殺菌し、干すのを何度か繰り返しました。桶の内側には殺菌用の柿渋を、外側にはニスを塗り、それは大事に使っています。

木桶仕込みのお酒に否定的なふうなことを、最初に言いました。だけど、木桶のお酒をジャンルとして確立したい思いは、僕にもあるんですよ。桶仕込み保存会も、応援したい。そのことが、桶の職人さんの存続につながれば、とてもいいと思うんですけれどね。

桶の酒

「桶の民」
木桶仕込み
純米酒
500m 2,625円
このお酒の入手方法については「桶仕込み酒」をご覧下さい。

南部美人

岩手県

桶仕込み保存会事務局  〒381-0201 長野県小布施町500 TEL.026-247-7511 FAX.026-247-6369 E-mail: info@okeok.com