小澤酒造

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アホなことではあるけれど・・旨いじゃねえか!

東京都・小澤酒造  
田中充郎さん(杜氏)
小澤順一郎さん(代表取締役)


東京都・小澤酒造
ダイナミック!な筆づかいで桶の新調を祝う蔵元・小澤順一郎さん(右)と、桶をつくった藤井雄史さん(左)


裏山から酒蔵を見守る八幡様、その近くに生えていた樹齢200年とも300年ともいわれる杉の木3本が、細心かつ独特の手法で切り出された。そして、桶のために製材に・・


大阪・堺市のウッドワーク(藤井製桶所)にて。古杉から組まれた新桶の、底板入れ作業の最中

小さな量の木桶仕込み、蒸し米と麹は手運びで。


杜氏が関知しない微生物が、桶の中にはゾロゾロ

――――田中充郎さん(杜氏)

木桶仕込みをするにあたって考えたのは、「ふだんとは逆をいこう!」ということでした。

ふだんの仕込みでは、酒をつくる酵母以外の微生物は入らないよう管理します。醪(もろみ)を仕込むのはホーローや樹脂のライニングタンク、ステンレスタンクなどで、容器を消毒してしっかり微生物管理できる。つくる我々が「主」、管理される醪は「従」といえる関係が確立しています。だから杜氏の私は、「このように、お酒をつくりました」と社長に説明する立場にあるのです。だけど桶の世界は、それと正反対。木肌には無数の穴があり、醪が沁みこんで微生物の棲みかになる。そこには酵母もいるだろうけど、私が全然関知しない微生物もゾロゾロ存在しちゃうはずで・・。どう考えても桶の中の醪が「主」で、我々は発酵をお手伝いする「脇役」に過ぎない。だからこの桶仕込みのお酒だけは唯一、「こういう酒が、できちゃいました♪」と、社長に言ってしまえる。そのほうがオモシロイ――そう考えたんです。

とはいえ、手が焼ける仕込みになりました。は昔ながらの、麹と蒸し米は手運び。温度管理は、昔ながらの冷却筒に氷を入れ、醪に吊るしました。蛇管を入れて冷水を回しちゃえばラクですが、ビニールホースが桶から垂れるの、私、何かヤだなと思って・・。冷却筒使いはかれこれ20年ぶり、若い社員なんかは初体験です。これが予想以上の重労働。醪を冷やすため、こちらは真冬に大汗かいて、指まで切ったりね・・。

桶仕込みで再発見したのは、意外にも蔵の外気の移ろいかもしれません。いまのタンクは温度調節が完璧だから、外気温が気にならない。でも桶はそのへん、敏感です。いくら氷を抱かせても醪の温度が落ちないとき、ふと「ああ、今日は暖かいんだ」と気づく。そんな感覚の体験は、酒をつくる者には必要な気がします。・・ま、毎日はヤですけどね(笑)。

そして梅雨どきの、あの湿気! 蔵に置いた桶に、カビが・・。殺菌剤を使いたい衝動を抑え、手早く落とします。桶の底板と側板のぶつかる部分、桶屋さんは「雑菌だまり」と呼ぶのです。あまりにもそのものズバリで・・我々も神経をピリピリさせて見守ります。

 そうして生まれた木桶仕込みのお酒・・発酵途中で醪が放ったバナナの香りは、絞った直後には消えたのに、夏を越して寝かせたものを飲むと、改めてその香がコツンと感じられます。木香も少々・・。《キレイな大吟醸が一番》といういまの価値基準で桶のお酒を判断されたら、木香はある、酸は高いで、もうどうしようもない。でも少し発想を変えることで、桶のお酒が活きてくる場所、存在できる居場所は、絶対にある。そう思える酒です。

「ノー」と言えない日本人。すべてはそこから始まった

――――小澤順一郎(社長)

金髪娘のセーラから「桶仕込みをやりましょう」と言われて、「ノー」と言えない日本人の哀しさ(笑)。私がイエスと言っちまったところから、すべては始まりました。

桶で酒を仕込むということは、物理的、科学的、コスト的にもアホなことです。アホなことではあるけれど、面白い。面白いのに、アホなことだからといってやらないのは、よくないじゃないか・・。そんなわけで、うち蔵の裏山、八幡様の横で枯れかけていた樹齢200余年の杉を切り、新桶をつくり、2003年から酒を仕込みました。

それ以来桶の酒を造っていますが、桶で酒を仕込むことの「アホな部分」は変わりません。しかし、アホな部分に意味があることを知っているから、そこにこそ桶の可能性があることに気が付いてから、つぎの仕込みが待ち遠しくなりました。「旨さだけが酒の価値ではない」とか言い訳を考えて取り組んだ桶の酒でしたが、「別の旨さがある」ことを教えてもらいました。他の酒にはない独特の強さ、存在感に磨きをかけて桶の酒はこれからもっともっと旨くなると思います。

 

奥多摩の蔵元の、太っ腹な新桶建造物語

東京の銘酒「澤乃井」を醸す小澤酒造の酒蔵は、奥多摩の美しい沢沿いに佇む。2002年、創業300周年を記念して蔵の裏山から杉の古木を切り出し、桶を建造。04年にも桶をさらに新造。桶仕込みに取り組むほとんどの蔵が古桶を使う中、太っ腹で歴史的な挑戦が続く。



「彩は(いろは)」
木桶仕込み 
720ml 
オープン価格
このお酒の入手方法については「桶仕込み酒」をご覧下さい。
小澤酒造        
澤乃井

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