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私は酒造り六十年になりますが、桶仕込み酒の復活は初めての経験と言ってもいいでしょう。というのは、若い頃米洗や桶洗いなどの仕事を必死にしている間に、桝一の酒蔵から桶が消えてホーロータンクの時代になっていたからです。
先輩に聞いても分からないといわれ、まさに未知の世界。正直なところ何十年振りの緊張感を覚えました。が、仕込みが進むうちに、蔵に大桶がずらりと並び、蔵人が酒造り唄を張り上げている昔の光景が目に浮かび、なにか力が湧いてくるような感じがして。
できた酒を冷で味見したときの感激はひとしおで、早く燗をして飲んでみたいとも思いました。自分で言うのもなんですが、実にいい酒ができました。かすかな木の香りと品のいい味の濃さ。
蔵の外に出ると雪景色。桝一の新たなる道が始まりました。

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