

――工藤信夫さん(専務取締役)
あの六本木ヒルズで開かれた「いまさら、木桶。」に、オレたち夫婦で参加したんだけど、イヤハヤ驚いたね。桶の話であんなに人が集まるって、どういうことなの。これからは酒の仕込み桶が、よくなるのかね・・?(笑)
うちは秋田県北の大館で、いまは酒樽をつくってるの。70代(1人)と30代(2人)の職人3人と、オレと親父で。桶づくりも、四尺桶(底板の直径、桶の高さがともに1メートル20センチ強ほど)前後なら応じますが、竹タガを入れたい場合、ご注文はお早めに。いい竹の手配には、時間がかかるからね。
もともとうちは祖父さんの時代から、醤油樽の木取り(原木を割って削って、樽づくりの部材=樽丸をつくる仕事)をしていたわけ。かつて明治時代に鉄道が通じて以来、秋田県では醤油樽用の樽丸づくりが盛んになった。ここ大館でも、昭和のはじめに野田(千葉県の一大醤油産地のひとつ)から職人が来て樽づくりを伝えたとかで、以来、樽づくりや木取りが盛んになったわけ。
秋田天然杉の顔を見ながらずっと木を割り続けてきたから、特にオレの親父(金一さん)、木のことはよーく知ってる。昔、秋田県の木取り職人でも一、二の腕を競ったらしい。とはいえ桶樽だけで仕事してけば、苦しい。いい材木を手に入れて、一年ぐらい干してカンカンに乾かさなくちゃ、できない仕事だし。ほんと、時間とジンコ(お金)が要るんだわ。
それで親父の代から、おがくず(大鋸屑)やチップ製造も手がけてきた。お客さんは、キノコ農家や畜産家。このおがくず商売と樽商売を両輪にして、何とか回してきたんだな。
・・そんなわけで、気になるわけ。桶の話であんなに人が集まるって、どういうことかね・・?

――工藤金一さん(代表取締役)
木は人と同じで、全部違う。顔をみれば、いい樽になる材か、すぐわかる。木を割るというのは、目を(木目に沿って)割っていくんだな。機械で製材すると、この目を結局、塞いでしまう。手で割ったものは、ちゃんと目どおりしてるから、薄くても大丈夫。それをカンナで削れば、光が違う。いまは能率があがらないとマズイと言って、サンダー(研磨機)でやる人もいるけど、あれでは光がねえの。木そのものが、わかんねくなる。
「木取り」(樽丸)仕事というのは、型も何もないのに、とにかく勘で、全部同じ厚さに(木を)割っていくんだから。うまいもんだよ。(樽屋用の材を)使いやすく、早く、同じ(大きさ)につくる――この三拍子が揃わないとね。底も蓋も、側(板)だって、ちゃーんと「木取り」が準備してやるんだから。(それを使う)樽屋は、楽なよ(笑)。
以前、うちは竹タガに佐渡の竹を使ったけど、一人残った職人が年とって、もう手に入らなくなった。いま、竹は京都から取り寄せてるの。道具もいまの鍛冶屋だと、昔のようには刃が切れない。そんな時代に・・これから酒、大きな桶が、よくなるんかな?
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