桶トーク1:桶と日本文化
記念講演「桶と日本文化」小泉武夫(東京農業大学教授)
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葛飾北斎のパトロンだった酒屋さん、桶仕込みに再挑戦
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  それと今日も来られている、函館の小田島水産。この会社に、私は行ったことがあります。これもNHKの取材でした。私、ずっと長い間NHKの番組で、《食べて旅して》という番組をBS2で行っていたものですから。ここは日本で一ヶ所だけ、すべての塩辛を全部、桶で仕込んでいる。後のパーティーで、ここの塩辛が出るんじゃないかな・・ああ、出ると言っていますね。

そうしたら皆さん、パーティーのとき、その塩辛の色を見てください。桶で仕込むと驚くべきことに、桜色なんですよ。きれいなイカの塩辛ですよ。普通なら黒くなってしまいます。真っ黒にね。それが、桜色なんです。ちょうどいま、桜の見ごろですね。私は不思議に思うんです。桶で塩辛を仕込むと、桜色のピンクが出てくるんだ。小田島さん、後でご馳走してくれるって。

それから、今日は北海道の釧路から、カネセフーズの魚谷さんも来ている。もしも第1回桶大賞を創ったら、この人にやったほうがいいかもしれないよ。あるとき、北海道で何百年も続いた醤油屋さんがやめてしまい、醤油蔵を解体することになっちゃった。そこにある桶も、全部壊すという。それをここに来ている魚谷さんが聞きつけて、巨大な桶を分けてもらって、クレーンで巨大なトラックに積んで、自分の会社に持って帰ってきた。それで、新しく桶をつくるよりさらにお金をかけて、全部修復して、それで魚の醤油、魚醤(魚の醤油)をつくっているんですよ。

この魚醤がものすごく味がよくて、素晴らしいんでね、今はもう生産が間に合わない状態で、セブンイレブンのおにぎりなんかにも使われている。一部上場のわらべやさんが、大量に使う。それから皆さん、新潟県の加島屋さん。「さけ茶漬」が有名なね。あそこでも、カネセフーズの桶でつくった魚醤を取引されている。ものすごく味が濃くて強くて100%天然なんだけれど、ものすごい丸い味が出ている。桶っていうのはすごいなぁって感じます。

それから今日、サンフローラっていう会社の社長さんも見えていますが、大変な努力家でしてね、この人は。蜂蜜とかプロポリスとか、いま注目されているものをつくっているんです。何をしているかというと、特にプロポリスは、ちょっとピリピリするでしょ?あれを桶で発酵・熟成してね、5年とか、桶で蜂蜜を熟成する。桶でプロポリスを熟成する。自分のところでは桶でしか、蜂蜜やプロポリスを熟成させない。そういう方も来ておられます。

実は、私ども「食にいのちをかける会」っていう会をつくりまして、今日は全員来ているんですよ。それは、実は桶を最初からやっていたんですよ。さっきの小田島さん(小田島水産)も、魚谷さん(カネセフーズ)も、一番先に挨拶した白扇酒造の加藤さんも、同じ会で。我々の会でやっていて、これから桶を使ったところで、「桶の復権デー」。ますます、この会に谷口さん(サンフローラ)にも入ってもらって、「桶」という世界を、日本にあったかい文化を、取り戻していこう。そういうことが非常に大切だと思いますね。

・・とまぁ、大体こんなもんかな。(笑)
まだまだ話は尽きないけれど・・。日本人の心の中に常に、桶というものの温かみを、文化の象徴として持っていてください。それが非常に大切なこと。それから、さきほど加藤さんが冒頭の挨拶で、「桶には宇宙がある」と言われましたが、まったくその通り。宇宙というものは、ものすごく大きなものだという思いがありますが、いまひとつは、我々がまったく知りえない未知の世界がある。限りない可能性を秘めている。そこが宇宙だと、思うんです。桶を一つ置いておくだけで、ものすごい数の生き物がいるんですよ。それを我々人間が、うまく巧みに使って、そこから素晴らしい文化を引き出すんだ。これほどロマンチックな文化はないと、僕は思っています。

今日は皆さん、お忙しいところ桶のシンポジウムに来ていただきまして、ありがとうございました。これから我々も、もっともっと桶のことを発信していきながら、皆で桶仲間をつくっていきたいと。楽しい文化活動にしていきたいと思います。どうもご清聴、ありがとうございました。(拍手)
 
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