桶トーク2:パネルディスカッション
●モデレーター
 米倉誠一郎
 (一橋大学イノベーション研究センター教授)

●パネリスト
 梅原真(デザイナー・プランナー)
 上芝雄史(株式会社ウッドワーク
 藤井製桶所代表取締役)
 セーラ・マリ・カミングス
 (株式会社桝一市村酒造場取締役)

●友情出演
 小泉武夫(東京農業大学教授)
 野中ともよ(三洋電機代表取締役会長)
 辰巳琢郎(俳優)
 小坂憲次(文部科学大臣)  
 以上、登場順
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葛飾北斎のパトロンだった酒屋さん、桶仕込みに再挑戦
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米倉
・・もう、我々みんなね、(早く呑みたい! 食いたい!)って感じで、紹介されて脇から壇上に上がってくるという段取り、すっかり忘れてもうここに座っていますが・・・。(会場に向かって)Are you OK? みんな、ちゃんとOK(オケ)!と言わなくちゃ、今日は一貫してね。Are you OK?
会場
OKEY! (笑)
米倉
ところで今日のこの会がどういうものか分かっている人、ちょっと手を上げてください・・あらら、いいですねえ。5人だけ?(笑)
かくいう僕も、実はよくわかっていないんですが・・・(笑)。今日の会を言い出したセーラ・マリ・カミングスに、尋問。立って、この会の由来を説明して下さい!
セーラ
皆さん、こんにちは! こんなに大勢の方が来てくれて、ありがとうございます。
桶がOKになるために、ありがとうございます。

私自身が長野オリンピックのために、日本の信州へやって来たんですが。そのオリンピックの前に、長野県小布施町にある酒屋の桝一市村酒造場(ますいちいちむら・しゅぞうじょう)に就職しまして。ここは5代前の蔵元が、葛飾北斎(かつしか・ほくさい)のパトロンをやっていた蔵元なんですね。それで、北斎の「富嶽(ふがく)三十六景」に登場する桶(おけ)職人さんの姿も、印象的でしたが・・・。

それで桝一の蔵に入ってみても、高さ2メートル以上の巨大な木の桶が残っているんですが、残念ながら使われていませんでした。我々の蔵は、もう50年前に木桶での酒の仕込みをやめていました。ただ幸い、今年80歳になる大杜氏(おおとうじ)、つまり親父(おやじ)さんは、15歳くらいから酒造りに入りまして、最初の10年間は全部木桶で仕込んでいたそうなんです。だから、一人だけでもそういう人が我が社にいるのだから、いま復活できれば、きっとできるでしょう? だから親父さんに、お願いしました。

  セーラ「お願いします。ぜひ、木桶を復活して下さい」
  親父さん「いやーっ。とーってもじゃないけど・・・.」
  セーラ「とてもじゃなければ、できるんだ!!」


と(言葉遊びで)先に喜んでしまいまして、「じゃ、やってみよう!」となって(笑)。
でも桶屋さんが、なかなか見つかりませんでした。電話帳には、桶屋さんの番号がたくさん載っていましたが、電話を何十ヶ所かけても、「ダメ・だめ・駄目・ダメ・だめ・駄目」という返事ばかり。「OK(オケ)」と言って欲しいのに、「ダメ・だめ・駄目」と言われてしまう。
それで大杜氏から、昔お世話になった桶屋さんを紹介してもらいました。もう定年になられていましたが、「もしかしたら」ということで、お願いしてみました。それで、その清水作治(しみず・さくじ)さんという新潟県の桶屋さんに、お願いできることになりました。
その清水桶屋さんが、かつて桶造りをはじめたのが50年前ということでした。我々(桝一市村酒造場)が桶仕込みをやめたのが50年前でしたから、ちょうどすれ違いになってしまっていたんですが・・。
長野オリンピックの前の年、清水さんは桶造り50年ということで、国から黄綬褒章(おうじゅ・ほうしょう)をいただくことになったんです。でも、その清水さんに後継者はいません。そういうこと、「しょうがないじゃないか」って言うけれど、「しかたない」んじゃない、(解決の)「しかたはある」んだ、何とかしなきゃいけないんだ・・というふうに、思うようになりまして。

2000年にミレニアムを迎えたとき、2000年の文化を持つ日本の我々が、将来の世代に向けて何を贈れるんでしょうか?と考えました。それは日本の和の文化だ、「和」だ、「桶」はその象徴的なモノであると考えて、わが社は桶仕込みを復活したんですね。

でも、桶屋さんだけだと、なかなかつながってこられません。だから、みんなの力を少しずつ合わせれば、きっと、できるでしょう? 長野オリンピックのテーマにもあった、「輪になって踊ろう」、みんなが力を合わせてやるっていうことを考えて、いろいろなところに呼びかけて、ようやく30社以上の酒蔵が、お酒の木桶仕込みを復活しました。その多くのお酒を、今日は皆さんに一緒に味わっていけます。
とにかく、「桶で出来た酒は、どんな味がするんでしょう? 呑んでみたい」というのが最初の動機で、そこからドンドン入り込んできたんですね。すると、大切なことって、ひとつ消えるとまたドミノのように、ドンドンと消えてしまうんです。でも、ひとつひとつ立たせて、みんなでつなげていけたらいいなぁと思います。簡単に言うと、そういうことです。
米倉
話が長い! でも、わかった!(笑)
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