●モデレーター
米倉誠一郎
(一橋大学イノベーション研究センター教授)
●パネリスト
梅原真(デザイナー・プランナー)
上芝雄史(株式会社ウッドワーク
藤井製桶所代表取締役)
セーラ・マリ・カミングス
(株式会社桝一市村酒造場取締役)
●友情出演
小泉武夫(東京農業大学教授)
野中ともよ(三洋電機代表取締役会長)
辰巳琢郎(俳優)
小坂憲次(文部科学大臣)
以上、登場順
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米倉
しかしですよ、これは大事な話で。上芝さん、実際に桶を造る中で、いまおっしゃっていたコストの問題。コストはあまり上がらないって言ったんですけれども、ほんとうに循環していけるものですか、日本って?
どういうふうにしたら、木桶の文化が定着するんですか?
上芝
いま食品は二極分化しています。一升1万円する醤油もあるんです。
米倉
一升1万円?!
上芝
税金も何も入っていないのに、醤油が一升1万円して、それでも売れるんです。では、そういうお醤油は誰が買うのかというと、決してマニアではないんです。「たまに使うモノだったら、よいお醤油を、よいお酢を使おうじゃない」という人たちなんです。
お醤油ですと、年に一人が使う量って、大体5リットルくらいでしたかね。だから、そのわずかなモノに、どれだけの贅沢(ぜいたく)を込めるか。そういうよいモノを食品として、調味料として買われる方が増えていくと、たぶん、木桶は増えると思います。
米倉
つまり、起点は我々だってことですね?
上芝
そうなりますね。
米倉
(発言しようとする野中さんに)単なる脇役なんだから、あまり出ないように(笑)・・、でも、許します。話してください。
野中
そうなんです。「保存しなければいけない」とか、「守りましょう」とか、「次の世代を育てよう」とか、それは一応、大事だけれども、要はGDPと一緒なのね。その60%は、私たちがデートをしたり、飲んだり食べたりして支えているんだから。それと同じように、「桶っていいよね〜!」って言って、やっぱり「一家に一台、桶」ってことで(笑)。
米倉
・・持つわけ、桶を?(笑) 家に?
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野中
そう! それでお風呂場で桶にお湯を入れると、いい香りが出てくるの。みんなが、やっぱり「桶OK!」って言って、そうしたら、ね、セーラ?
米倉
梅原さん、どうぞ。脇から来て、遠慮しない人がいますから、遠慮しないで話してください(笑)。
梅原
・・あの、アメリカの話ばっかりして、ごめんね。去年の暮、今日のこの会のお知らせハガキを、木の桶でデザインしてから、
僕はニューヨークに出かけました。それで、泊まるホテルの12階に上がって窓のブラインドを開けたら、目の前の上の方、そのホテルの一番屋上があって、そこに木の桶があったんです。
これ、ビックリしました。1800年代の終わり頃、摩天楼(まてんろう)を構築していくときに、ビルの一番上に置く給水塔(きゅうすいとう)を持って上がるにも、クレーンがなかった。だから、バラバラにした桶板を持ってあがって、給水塔にした。
ところが最新の高層ビルができるいまでも、ビルの上の給水タンクは、桶なんです。なぜなら木桶は、水がおいしい。それと、ニューヨークみたいな温度の落差が大きい都市の水をキープするには、桶がいい。微生物のヌルヌルのやつは、それこそエポキシとかプラスチック系のタンクのほうが、よけい発生するらしいですよ。空気が流通する木桶のほうがいいと、だからいまでも高層ビルの上のタンクは、桶、なんです。
で、僕、ちょっと調べてみたら、それで写真展覧会をしている人もいます。桶ばっかり写して、ニューヨークの空ばっかり写して。
そのことに気づいてから見てみると、ほんとうにニューヨークは、むしろ130年間も桶の伝統を守っているんです。日本は捨ててしまったのに。何なんだ、これは・・みたいなね。
米倉
その張本人がね――僕の上部団体の大臣が、ここに来られましたんで。皆さん、小坂文部科学大臣が、ここに駆けつけてくれました。どうぞ、壇上へ(拍手)。
(小坂憲次さん、壇上へ)
米倉
なんだか、《友だちの友だちは、みんな友だち》状態になってきましたね・・。日本で、文化が守られていないじゃないか、という話です。いま来たところで、話が全然わからないところで、ナンでしょうけれど・・。
小坂
まったくわからないところですけれども――日本人が海外に行って、「私は日本人だ。経済大国だぞ」って言っても、誰も尊敬も何もしてくれない。でも、「私は日本から来たんだ。北斎、知っているでしょ? 小布施、知っているでしょ?」と。さらに「桶、知っているでしょ?」と、これからは言えると思うんだけれども・・そういった日本の文化、伝統、芸術というものを話した時に、初めて「あぁ、知っている。素晴らしい国だね。尊敬している」って言われる。尊敬するもとはやはり、芸術、文化だと思うんですね。
そういう意味で、伝統の文化、芸術を育てる、そして継承するということは、ほんとうに大変なことで。壊すのは簡単ですから。放っておけば、すぐ壊れてしまいますが。
しかしそれを再活性化して、また次の世代につないでいく。そういう営みは、人類がこれまでやってきた営みで、それが我々の宝ですから。文化はやはり宝だと思うんですね。
米倉
ありがとうございます。それでですね、先ほど聞いたら、大きな桶をつくる職人さんが、もう5人ぐらいなんですって。これ、どうしますかね? 文部科学省としては。
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小坂
もうね、匠(たくみ)の保存ですよ。
米倉
ここにいるんですよ。
小坂
セーラが来る前から、私は長野に住んでいますし、桝一市村酒造場の市村社長は、私の友人でもありました。セーラが来て、それで「蔵部(くらぶ)」というレストランができて、そこに行った時は驚きでしたよね。
ただそれ以前でも、例えば先代の社長は小布施町の町長をつとめられ、文化を保存することに非常に熱心な方でした。北斎館(ほくさいかん)をつくったり、それから町の中を流れる川を・・川って、川底が平らだと、水が少なくなると流れる速度が遅くなるんですね。だから真中を細くしますね。まぁ、京都などにありますけれども。そうすることによって、少ない水で流速が出て、ゴミをみんな流してくれる。そういう形で、町をきれいにしようとか、そういうことまでやった、すばらしい町長さんでしたから。
そういう意味で、私は桝一市村酒造場がドンドン変わっていくのを見て、「あぁ、すばらしいなぁ」と思っていました。でね、そのレストランに、でかい桶がドーンと置いてあったわけです。やはり、美しいですね。金属の桶との違いは、やはり日本の文化そのものだと思いますから。どうやって360度、水が漏らないようにするんだろうか・・・。
やはり、日本の匠の技ですよね。宮大工(みやだいく)もそうだし、すばらしいと思う。ぜひとも、残してほしいですよね。だから、みんなでお金出してね、保存会をつくって、そこで仕事つくってということにしてもらって、しっかりやってもらえばいいですよね。
セーラ
ぜひ、これから国を挙げて・・桶屋さんを応援してもらいたいと思います(会場、拍手)。
小坂
小泉さん(首相)も桶アート、描いたんでしょ? まだ見ていないんだけれども、新聞に書いてあったから、いきなり来ちゃったんだけれど。だから、小泉さんにも責任をとってもらいましょう!(笑)
米倉
いやー、でもですねぇ、最近の新聞の論調なんかでも、いまおっしゃったように、経済だけでも尊敬されないし。でも、日本にたくさんよいものがあるじゃないか。それをもう一回きちっと見直して、お茶でもそうだし、禅でもそうだし。やっぱり中国のものと違いますよねぇ。日本はしぼりきったものが残っているし、食文化もそうだし。
その辺を、いまは亡きアンドレ・マルロー、フランスの文化大臣にもなった彼が、「フランス文化を残そう!」って頑張って言ったのと同じようにですね、経済産業省とか農林水産省も――実は中川昭一(農林水産大臣)って僕の同級生なんだけど、それから平ちゃん(竹中平蔵総務大臣)のいる総務省とかじゃなくて、文科省が一番、重要な役割を担っているんじゃないかって気がするんですけれども(会場、拍手)。
小坂
私が来たからそう言っていただけたのもあるだろうし(笑)、事実、やはり教育が危ないといわれ、日本の文化がだんだん廃れてきている。伝統文化の再生ということが各地で言われ、地域文化がやはり日本の文化のもとですから。地域文化がしっかりしていないと、やはりダメですから。地域文化っていうのは、人がだんだんいなくなる少子化の中で、住む人がいなくなれば、いとも簡単に滅びてしまう。
伝承していくには、口伝(くでん)というものが一番多いでしょうけれども、最近はいろいろ書きものをして残す地域も増えてきた。そういった活動に、やはり光を当てていくことが日本の伝統文化を守り、その総和としての日本の文化を高めていくことになると思いますから、それを担っている文部科学省というのは、その責任は大きいと思います。
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桶仕込み保存会事務局 〒381-0201 長野県小布施町500 TEL.026-247-7511 FAX.026-247-6369 E-mail:
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